地震のない国
地震、津波、火山の噴火、台風や豪雨に伴う洪水や土砂災害・・・自然災害の多い国、日本。物心ついた時から「東海地震(南海トラフ地震)がいつ来てもおかしくない」と言われてきました。耳タコです。とはいえ現在に至るまで起こっていないので、もはや来る来る詐欺とまで思ってますが、来てほしくはないので実際ありがたいです。
幸い生まれ育った地域は大地震には見舞われてはいないものの、小さな地震は日常的にあり、小学生の頃から地震に対する避難訓練を頻繁に行ってきました。机の下に隠れる、防災頭巾を被って校庭に移動する、校長先生に「全員が並び終わり静かになるまで15分かかりました」と言われるまでが訓練。
そして阪神大震災、東日本大震災が起こりました。大地震、火災、大きな津波被害。テレビを通してですが人間が人生を懸けて作り上げたものが一瞬にしてゼロになる場面を目にして自然への驚異を感じ、いつ来てもおかしくないと言われる南海トラフ地震に対して恐怖を覚えました。いつ来るかわからない災害に備えることしかできない人間とはなんと無力なことか。人災と違って責める相手がいないのが自然災害です。
前置きが長くなりましたが、そう、ドイツは地震がほぼゼロの国だそうです。洪水などの自然災害はそれなりにあるようですが、多数の人間が一度に亡くなるような大きな災害は稀だとか。
かつてアフリカ人とブラジル人とこんな会話をしました。
私:日本は自然災害で多くの人が亡くなるんだよ
ア:アフリカはHIVやマラリアなど病気で亡くなる人が多いよ
ブ:ブラジルは人が人を殺す事件が日常茶飯事
全員:どこの国も異なる死因で人口の均衡が保たれてるってことかな~
戦争や紛争で命を落とす国もあります。もしもここにドイツ人が加わったら・・・
ド:ドイツは医療も発達してるし、銃社会じゃないから治安もそれなりに安定してるし、自然災害も少ないよ
ってなるのでは。ドイツしか勝たないんじゃ?実際にドイツに来て、地震がない国なんだなあと実感するのはなんといっても家の中の収納とインテリア。
積むよねぇ
地震がある日本でも積んでるといえば積んでますが、食器棚に皿を積んだとしても扉を閉めて開かないように工夫するだとか、棚が倒れないよう対策を施したりだとか、知恵を働かせてると思うんです。備えよ常にの精神。そういうのが一切ないです。ワインやウイスキーのボトルがインテリアとして無造作に飾られていたり、扉のない棚に皿が積まれていたり、床から天井まで本がびっしり入った固定されていない本棚があったり。クローゼットも扉がない率が高いです。見せる収納が主流なんでしょうか。
ガラスのボトルや本が大量に降ってきて棚が倒れ生き埋めになる場面
がありありと想像できてしまう日本人 is わたし。加えて私のようなどんくさい人間は日常的に棚にぶつかったり足をひっけたりしがちなので地震がなくても人為的にモノを落とす気しかしない収納が多くて日々ひやひやしています。
ドイツに来て自分の身に起こる地震の心配はなくなったかもしれません、でも家族や友人が日本に住んでいることを思うと自然災害は決して他人事ではないです。どうか南海トラフ地震が来ませんように。
ドイツの信号
どのくらい信号を守りますか?
今日は「信号を守る or 守らない」が主題です。
コロナの影響もあり、ヨーロッパが絶賛バケーション期間だということもあり、外国人局の稼働が鈍くアポが取れません。つまりビザの申請がまだ始まっておらず、それに従い語学学校の手続きも進められず、特別外出する理由もなければ行く場所もなく、うろつけばコロナ感染のリスクが上がるという条件の下、自粛生活が捗っています。
そんな引きこもりがちの私ですが、少ない外出歴でありながらあることに気づきました。
ドイツ、歩行者がめちゃくちゃ信号を守っている!(気がする。)
ここからは私の持論ですが、歩行者の信号へのリスペクトはそれ単体で生まれるものでなく、信号側にリスペクトされる価値があってこそだと思うのです。
は?
と思った方へ、世の中に存在する(私が出会った)まったくもって信用できない信号をご紹介します。
青になった2秒後に点滅し始める信号
→200%渡り切れない!
こっちも青だけどあっちも青な信号(スクランブル交差点ではない)
→普通に事故る謎システム
いろんな国でいろんな信号に騙されてきました。はたまた信号の都合ではなく謎ルールに遭遇したこともあります。
赤でも車の右折はOK!
えぇ・・・。
日本は右ハンドル、左側通行の国です。すべてが逆の国に行けば文字通りすべてが逆であり、
右見て左見てもう一度右見て
が通用しません。左が先です。そんな慣れない不利な条件下、信号が赤なのに車に右折してこられた日には大パニックです。つまり、信号を守っていれば当たり前に安全であるという日本の常識は世界の常識ではないということ。信じられるのは自分だけという国も実際多いです。いろんな意味で。
話を戻すと、
ドイツは歩行者が信号を守る
=信号が信頼できる、かつ交通ルールも明快
なのでは、と思ったのです。それにはよく聞くドイツ人はまじめ、日本人と似ているというのも寄与しているかもしれません。余談ですが、ドイツ人の夫によるとドイツ人は実際『ルールは守る』傾向にあるらしいです。そう、きちんと定められたルールはきちんと守る。でもこのコロナ禍、世界中で自粛が叫ばれている中ドイツでは早い段階でコロナパーティの騒ぎがあったり、自粛勧告に耳を貸さない国民が多く報道されていました。夫が言うには、『自粛勧告』はルールではなくただの『要請』だから守らない人がいるのだそう。な、なんという・・・屁理屈風でありながら妙に納得させられてしまう理論だこと。
たかが信号、されど信号。信号を守る、信号が守られるという日本ではごく当たり前のことに感動を覚える私のスタンダードの低さを疑うとともに、この国は信用できる気がする!と思えたことが収穫です。
ドイツの夏
日本の梅雨が明けるか明けないかくらいの時期、7月下旬にドイツ入りしました。現在住んでいるのはドイツの北西部 (Nordrhein-Westfalen州) 、緯度は北海道よりも北で樺太中央部とほぼ同じくらいの位置らしいです。「樺太」なんて字面からして寒い…
8月、日本は梅雨が明け本格的に夏入り。その頃ドイツはさほど暑くなく、朝晩は肌寒いほどで、2020年は私に夏は来ないんだなあ、うまいことスキップしたなあとぼんやり思うなどしていました。これまでアフリカ、オーストラリア、ブラジルと南半球で他人よりちょっと多めに夏を過ごしてきたので帳尻合わせだとのんきに思っていたほどです。
8月半ば、ドイツ、本気を出すの巻
日本が連日「猛暑日」「熱中症に注意」「原則運動禁止」などと報道し、40度を超える地域も出ていたその頃、ドイツでも日中の最高気温は37度、夜間も30度以上の日々が続き晴れて私もドイツで夏を感じるに至りました。夏、スキップできてませんでした。
ここでドイツの夏と日本の夏の違いを私の独断と偏見で…
①湿度
②対策
③期間
この3つです。
①
日本は湿度が高く纏わり付くような暑さですが、ドイツは湿度が低いためベタつきません。木陰に入れば心地よい風が吹き汗もすっと引きます。刺さるような日差しは共通ですが、サウナの中にいるような日本の夏の方が大分過酷なのは間違いないです。
②
暑さの種類が違うので対策が全く異なります。エアコンなくしては死にかねない日本の夏に反してドイツの一般家庭にはエアコンがありません。家庭のエアコン普及率は3%ほどと聞きました。公共交通機関(トラムやバス)、小さな商店にもエアコンはなく、窓を開ける程度の対策。逆に窓を開けると熱い空気が入ってくるから開けるなという注意も受けたので、そこは臨機応変でしょう。屋内は日陰にあたるので締め切った方がひんやり感を保てることもあるのでしょう。ちなみに扇風機の普及率も体感ではそんなに高くなさそうです。暑さに対しての対策はほぼなしと言えるのでは。冷感グッズなどは皆無です。
③
それもそのはず、確かに暑くて不快な日もありながらドイツの夏は日本の夏に比べて超短期間で去っていきます。一週間も我慢すれば気温はぐっと下がるので、エアコンに頼らずともやせ我慢で乗り切れそうです。現に8月下旬の今、既に秋の気候となっています。今週の天気予報では最高気温23度、最低気温11度、朝晩は寒いです。
日本の「夏の風物詩」のようなものに一切触れられない夏。そういう意味で日本の夏が恋しくもあります。日本にいたらいたで暑い暑いと文句を言う日々なのですが、それもまた夏の醍醐味。
日本の夏、ブラジルの夏、オーストラリアの夏、アフリカ南部の夏、北アメリカの夏、数々の夏を経験し、そこへヨーロッパの夏が加わりました。経験はコレクション。
樺太中央とほぼ同じくらいの緯度となれば注目すべきは夏の暑さより冬の寒さでしょう。まもなく冬が到来し、その後真冬が襲ってきます。一年の半分ほどは冬、そして冬の間は雨が多くどんよりした天気が多いと聞いているので、心底警戒しています。寒さは苦手です。北アメリカの冬を経験しましたが、no more と思った記憶しかありません。どうなることでしょう。
ドイツの洗濯事情
突然ですが、柔らかいタオルと硬めのタオル、どちらがお好みですか?
実は私、当たり前にタオルはふわふわであってこそだと思っていたんですけど、世の中にはバリバリの硬いタオルを好む方も一定数いるみたいですね?目から鱗!タオルひとつとってもそんな価値観の相違があるだなんて想定外でした。
結婚生活を始めるにあたり、ドイツで一人暮らしをしている夫のアパートへ私が転がり込むという形をとりました。(これから二人で部屋を探し徐々に住空間を整えていく予定です。)男性の一人暮らし先で生活をしてみて、
家中のタオルが全てバリバリ
ということに気づきました。
どれもこれも硬いんです。バスタオルもフェイスタオルも手を拭くためのタオルも例外なくバリバリ。摩擦がすごい。そんなバリカタタオルの謎を解くために夫に問いました。
「このタオルたちは何年物?」
「柔軟剤は使ってる?」
「どうやって干してる?」
男の一人暮らし、言うまでもなくタオルになんのこだわりも疑問もないようで。水分を吸い取りさえすれば、タオルなどそれ以上でもそれ以下でもないという様子。そこで私は自由研究を行うことに決めました。
課題
『バリカタタオルをふわふわにする』
方法
①(私が)洗濯する
②洗剤/柔軟剤を見直す
③干し方を変えてみる
結果
①洗濯機の表示がオールドイツ語で読めないので使いこなせない
②洗剤の表記も読めないので夫が使っている洗剤と柔軟剤がオールインワンになったものを使うほかない
③パンパンして毛羽立たせて干したらふわふわになるってどっかで聞いたのでやってみたけれど・・・
タオルは変わりませんでした!
考察
自身の語学力不足からくる生活力の欠如による敗北感は否めませんが、今回はバリカタタオルをふわふわタオルに復活させることに失敗しました。洗濯機を使いこなし、洗剤/柔軟剤を適切に選び、乾燥機を使用して乾燥することができればふわふわになると予想します。また技術的な面以外にも、洗濯に使用する水が硬水ゆえに洗濯物の仕上がりが違ってくるのではとも考えます。シャワーで髪がバサバサになったり肌が乾燥したりするので、洗濯物も影響を受けているはずです。実際ドイツでは洗濯に水ではなくお湯を使用しているようです。洗濯機に湯の温度が選べる表示があります。そもそもその目の前にある文明の利器を使いこなせない私には理屈もわからないのですが。ドイツの家事もこれから学んでいく所存です。
以上、今回の自由研究は大失敗に終わりましたが、語学の習得、ドイツの家事を一から学ぶという先に繋がる目標ができたのでよし。いつの日かドイツの洗濯事情を解明、習得した暁にはまた詳しく解説したいと思います。
ドイツの水道水
ドイツで生活を始めて一番初めにぶち当たった壁
水!
そう、硬水への抵抗感。
これまでアフリカ某国やブラジルを始め数か国での生活を経験し、様々な国を旅してきました。世界には水道水が飲める国、飲めない国、飲めると言われていても基本的に飲まない国、色々あります。ここだけの話、私はこれまでどこにいようとも現地人が水道水を飲んでいる国では水道水を飲んできました。一度足りとてお腹を壊すこともなく。
(厳密に言うと一度だけ水が原因でひどい目に遭いました。 in バングラデシュ。もちろん警戒していたので水道水を飲むという行為は避けていたのですが、食事を手で食べる文化を尊重したところ、水で洗ったその手が汚染されていたというオチ。なんと詰めの甘い。ちなみに人生最大級のゲリでした。二週間くらい不調が続きましてね、ええ。)
話は逸れましたが、これまでの私は基本的に飲み水の味がちょっと違うな?と思ってもスルーしてきたのです。シャワーの水で髪がバサバサ、バリバリになるのどうにかならないかなとは思ったことがあるものの、飲み水をどうにかしようとは思いませんでした。が、ドイツ入りして2、3日の時点で、
水が喉を通らない
という事態に。味じゃないんです、なんかつっかかるというか。ごくごく飲めない。ビールを飲まないので俗にいう「ノド越し」たるものはわからないのですが、これのことなんでしょうか。このままじゃQOLが下がる!私(だけじゃないですが)の体の構成成分の70%は水なのに!水が飲めないのは大変な事態!
日本ではここ最近レンタルウォーターサーバーなるものが一般家庭にも普及してきています。真っ先に浮かんだのはそれ。それこそが解決策だと思い夫に掛け合いましたが、ドイツにはそんなシステムはないとあっさり言われてしまい、ドイツの水事情をググりまくるのでした。
日本の水道水は軟水ですが、水道水が硬水の国が世界には多々あります。それは知識として私も知っていましたし、現に髪がバサバサ、バリバリなので体感もしてました。今回知りたいのはそういうことじゃなくて、抵抗なく飲める水をドイツで手に入れる方法!グーグル先生は硬度とは何か、どこの国の水の硬度がどのくらいか(同じ国内でも地域によって違う場合あり)、軟水~硬水の幅・・・など専門的なことをたくさん教えてくれましたが正直その辺はどうでもよくて、抵抗なく飲める水を手に入れる方法早よ。そして以下の解決策が浮上しました。
①飲料水はペットボトル入りの水を購入
→コスパ悪い。買い出しが重労働。(※デリバリーもありますが)
②浄水器を設置
→うん、これだな
③硬水に慣れる
→最終手段だろ
ということでポチりました、ブリタの浄水器!ヨーロッパ在住の方々のブログを読み漁って辿り着いた浄水器、ブリタ。一択!
こちらです
浄水器メーカーであるBRITAの製品は、世界でもトップクラスの飲料水用フィルターです。浄水器を使用することで、飲料水の質を改善し、新鮮でおいしい水をいつでも飲めます。 BRITA公式HPより(https://www.brita.co.jp/)
そして初ブリタ、ろ過後の水をテイスティング…
これいい!いい仕事する!
こうして飲める水にあり付けたのでした。QOL回復!QOW(クオリティオブーウォ-ター)大事!ということで一件落着。と思いきや、検索過程で硬水によるバリバリ髪対策として硬水を軟水に変換するシャワーヘッドなるものの存在を知ってしまいまして。ほ、ほしい・・・←イマココ
人間とはなんと欲深い生き物なのでしょう。
===豆知識メモ===
和食には軟水
うま味の抽出が阻害されない
お茶、コーヒーなどがおいしく淹れられる
お米がふっくらおいしく炊ける
髪やお肌には軟水
便秘解消には硬水
洋風料理には硬水
硬水には血液サラサラ効果が!
ドイツ入り〜エモーション編〜
当日のガラガラの空港がこちら。
国際結婚も珍しい時代ではなくなった昨今。テクノロジーの発達により遠距離恋愛のハードルも下がりました。国境を越えて育む愛、浪漫。
一般的に恋愛の先には結婚があり、私たちも国際遠距離恋愛から国際結婚へと駒を進めることを決意しました。
国際結婚に限らず、結婚する際は様々な感情の揺れがあり、相応の覚悟が伴うものだと思います。生まれ育った家庭、両親の元を離れ、赤の他人として生きてきた相手とパートナーシップを結んで新しい人生を歩み始めるのですから。
社会人になってから現在に至るまで、散々海外を転々としてきました。時には数ヶ月、時には数年、日本を離れて異国に滞在しながらボランティア活動、資格取得、放浪…自由にやってきました。その度に日本の家族と涙で別れてきました。数ヶ月から数年で帰ってくることがわかっていても泣く、どんだけエモーショナルな家族なんだと言われればそうなんですが、私の家族はそういう家族です。本当は近くにいてほしい、そう願う親の気持ちを知っている以上、毎回親を悲しませていることに心を痛めてきました。
私がドイツ人と結婚すると告げた時、反対はされませんでしたが、夫婦で日本に住む道を…と母が望んでいること、彼女は今もその希望を捨てておらずいつか戻ってきてほしいと願っていることを私は知っています。
親不孝という言葉があります。私の認識では、親を悲しませる娘は親不孝です。でもこれは私の人生であり、親の望み通りに生きることが正解だとは思えません。親と自分、どちらの望みを優先するのか、自分を優先することは自己中なのか、私は親不孝なのか・・・20代の頃から常にこの葛藤に悩まされてきました。
コロナのせいで私の渡独は遅れました。数ヶ月間実家に滞在する期間が延び、母と祖母と過ごしました。結果的にこの期間に感情の整理ができたように思います。皮肉にもコロナのおかげです。
出発当日の朝、実家を出る時にまず祖母、妹、姪っ子と涙で別れました。泣きながらハグをして。妹が手紙を手渡してくれました。私も母宛、妹宛、祖母宛に3通の手紙を用意してありました。恒例の手紙交換。我が家の口で伝えきれない想いを手紙に認める文化、実はとても気に入っています。妹とは二人姉妹で、3歳の姪っ子も含めて仲良く過ごしてきました。彼女は涙を流しながら、私の背中を押してくれました。82歳の祖母は、頑張って、という短い言葉をくれました。その言葉の裏に(私はもうあなたに会えないかもしれない…)という思いを持っているのが伝わります。コロナのせいで一度渡独したらいつ戻ってこられるかわからない状況、そして自分はいつ何があってもおかしくない年齢であることを自覚しているからです。3歳の姪っ子は大人みんなが泣いている状況がどういうことなのかわからないらしく、困惑して半泣きの顔で佇んでいました。
母に空港まで送ってもらいました。道中ざっと2時間、感傷に浸ることもなくいつも通りに他愛もない話をしながらのドライブ。そして空港に近づと「いよいよだね…」と母が言いました。
空港はガラガラでしたが、連日海外からの帰国者のコロナウイルス感染が報道されています。出発ターミナルと到着ターミナルの階は違うとはいえ、やたらにうろうろするべきではないのは言うまでもありません。そのため、車を降りたその場でお別れをすることにしました。
お互いマスクをしていたので出ていたのは目だけ。その目が潤んでいくのが見て取れ、私も涙をこらえられませんでした。ハグをすると母は「幸せになりなね」と言いました。
私がそうしてきたのと同じように、母も時間をかけて心の整理をしてきたのを知っています。遠くに嫁ぐ娘に対する思い、自分自身の希望、娘の幸せ。母は車に乗り、手を振る私の前を通り過ぎながら、窓からもう一度「幸せになってね」と言って去っていきました。
「幸せになって」
母からのその一言が焼き印のように心に焼き付いています。そのシンプルな一言に集約された母の想いと共に。人生で初めて受け取った母からの「幸せになって」の言葉。この日のこの言葉の衝撃は一生忘れません。
12時間のフライトが終盤に差し掛かり、高度を徐々に下げていく飛行機の窓からドイツの陸地が見えてきました。
緑の占める面積がほとんどで、国土のどれくらいが森なんだろう、そんなことを思っていると、だんだん民家が見えて来ました。上空から見る建物は踏み潰せそうなくらいちっぽけで、その建物よりさらに小さい人間がどれだけ取るに足らない存在であるかを実感しつつ、そのちっぽけな存在の一人一人に人生があり、家族がいて、みんな必死に生きているということに思いを巡らせました。私が上空から見たのはドイツのたった一部です、でもそれは紛れもなく世界中に共通の景色でした。
日本人である私がドイツに来ることになったのは、たまたま出会ったドイツ人と結ばれ人生を共にするためです。広い世界の中で、別の大陸で生まれ育ったたったひとりの誰かと出会って結ばれる可能性はいかほどか。自分の直面している状況にものすごく不思議な感覚を覚えました。同じ国の同じ町にいても出会わない人間がいくらでもいる中で夫と出会えたこと、出会いは本当に奇跡だと思います。
ドイツ入り~フィジカル編~
2020年7月某日、 ようやくドイツへ入国!
ドイツ人と結婚後、絶賛コロナ禍により数ヶ月の様子見と待機期間を経て、日本からの渡独を果たしました。
~未曽有のコロナ禍、紆余曲折を経て無事入国するまでの記録~
コロナウイルスの感染拡大により3月からEUがEU圏外の国からの入国を拒否。私はその時点で日本での待機を決意しました。最終的に「ドイツ人と結婚しています」という証明をすることで入国できたので、今考えると、あの時点でも同じ手段で入国できたのでは?と思う疑問は残りますが、リスクがある中無理しなくてもいいかな、ポジティブに捉えれば日本の家族と過ごす時間が延びるし、という気持ちでした。
7月1日
『EU、圏外からの入国規制を緩和!』
の一大ニュース。
ようやく行けるのでは!という胸の高鳴りと、交錯する様々な情報。どうやらEUが圏外からの入国規制を緩和しても、EUに属するすべての国が規制を緩和したわけではない模様。それぞれの国によって方針が違うらしい。よし入れる!と思って日本から飛んできた日本人がドイツの空港で続々と入国拒否されているという情報も。一体どうすれば…。正しい情報が欲しくて大使館に問い合わせました。
「入国に関する最終判断は現地の連邦警察に委ねられていますので、そちらにお問い合わせください」
連邦警察…。さては大使館、テキトーなこと言って入国拒否されたときに責任が取れないから他機関へ回したのでは…という疑念を抱きつつ、現地にいる夫の助けを借りて連邦警察へ問い合わせました。
「日本人の配偶者ですか。規定では入れますね。入国の際に結婚を証明する書類を入国審査官に見せてください。」
お?え?なんと軽い!サクッとOKの返事が。軽すぎて信じていいのか迷うレベルでどうやら入れるらしいことが判明しました。そうとなれば次のステップは結婚を証明する書類とやらの準備です。
【書類準備】
実は日本で婚姻手続きを済ませたのち、渡独後にドイツで婚姻の手続きを行うつもりで既にいくつかの書類を取り寄せてありました。
国際結婚の手続きについてはまた別の記事にまとめる予定ですが、ざっくりまとめると、夫、妻の両国でそれぞれ婚姻手続きをする必要があります。どちらの国で先に手続きを行うかは自由ですが、国によって煩雑さが異なるようです。ドイツと日本の場合、日本での手続きの方が簡単だと聞いたので私たちは日本で先に婚姻届けを提出しました。その後、日本で「結婚証明書」なるものを発行してもらい、それをドイツの役所に届け出ることでドイツでの婚姻が成立するそうです。(この最後の行程については私たちはこれからなので、後日記事にします。)
ここで浮上するのが、結婚証明書とは?という疑問です。日本の役所で「結婚証明書の発行をお願いします」と言うと、日本には「結婚証明書(Marriage ⅽertificate)」という名の書類が存在しないため、ポカンとされます。が、要は日本で結婚が成立していることが証明できればいいということで、以下の書類が該当するようです。
戸籍謄本
婚姻届受理証明書
婚姻届記載事項証明書
おそらくどれか一つあれば結婚は証明できます。心配性かつ疑い深い私は戸籍謄本と婚姻届記載事項証明書(婚姻届と婚姻届を提出する際に提出した全ての書類のコピーがホチキスで閉じられたもの)の二つを取得しました。ようやく準備完了!と思いきや、書類の提出先が日本ではなく外国であるため、もう一手間かかります。
アポスティーユ
(簡単に言うと外務省による「この書類は日本国が発行した正式な書類です」という証明)
認証翻訳
(認証翻訳士(つまりプロ)による書類の現地語への翻訳)
の取得です。詳細はここでは省きますが、書類の準備には予想をはるかに超える時間とお金がかかるので計画的に!トホホ
【移動】
日本からドイツへのフライトは片道5万円台からあります。ピンキリです。価格が安いフライトは中東経由が多い印象で、もちろんトータルのフライト時間が長くなります。
このコロナ禍、第三国を経由し不特定多数の人間と接触するリスク、空港までの限られた交通手段などを考慮し、少し値段は張りましたが直行便を選択しました。
当日、日本の空港はガラガラでした。不安になるほど人の気配がなく静かなターミナル。"空港"のイメージとかけ離れすぎていてショックでした。チェックインの際にドイツの滞在ビザの提示を求められました。ドイツに入国できないリスクがある人を運ばないためです。私の場合ドイツ入国後に配偶者ビザを申請するのでまだ持っていなかったのですが、準備してきた結婚証明書類を提示することで通してもらえました。
12時間のフライト。乗客は20人ほどだったと思います。ガラ空きで座席は自由に使い放題でした。コロナの影響で機内食も簡素化されていると聞いていましたが、そんなこともなく。メニューを選ぶことはできなかったけれどちゃんと機内食でした。こんな状況でわがままは言いません、赤字であろうフライトを飛ばしてくれていることにただただ感謝です。
ドイツの空港に到着すると、そこもガラガラでした。普段空港では人の流れに沿って進めば何も考えなくとも入国審査、手荷物ピックアップ、出口まで行けますが、人の流れが全くないので自分で進行方向を確認しながら歩く必要があり緊張しました。入国拒否という最悪の結果への不安を感じながら入国審査官に
ドイツ人との結婚を証明する書類
ドイツ人夫のパスポートのコピー
連邦警察からの「入れるよ」のe-mailをプリントアウトしたもの
を手渡すと、滞在期間を問われたので、入国後にビザを申請して長期滞在する旨を伝えました。やりとりは以上、スムーズすぎて拍子抜け〜!
ちなみに空港でのPCR検査の義務はなく(任意。やりたい人は有料でできます。)、14日間の自己隔離についても機内でそれに関する注意書きの紙が一枚そっと配られただけでした。緩いぞ、こんなにゆるゆるでいいのかドイツ?と思ったけれど、島国の日本とは事情が違うのでしょう。
こうして無事ドイツ入りを果たしました。これまで住みたいと思ったこともなかった未知の国ドイツ。そこへ住むためにやって来た私。唯一の理由はドイツ人の夫。これから始まる結婚生活に乞うご期待!
次回予告
ドイツ入り~エモーション編~
ドイツに嫁ぐにあたっての心の揺れ、今しか書けない新鮮な心情を書き留めます。